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2008年4月

2008年4月27日 (日)

長き雨の烙印(堂場 瞬一)

 殺人事件の犯人として連行される親友の庄司を、学生の伊達はただ見送るしかなかった。県警捜査一課で中堅の刑事となった今、服役を終えた庄司が冤罪を申し立てた。しかし、その直後に再び似通った手口の女児暴行事件が起きる。伊達は20年前のある記憶を胸に、かつて庄司を逮捕したベテラン刑事・脇坂と対立しながらも、捜査にあたるが―。



 img20080427.jpg  長き雨の烙印

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 “冤罪”無実であるのに犯罪者として扱われ、人生の全てを失ってしまう。警察は完璧な人間の集まりではないのは解るが、しかし警察の強引な捜査が温床になっているのは間違いなく、あってはならないこと。angry

 本書は、冤罪をテーマに親友を目の前で逮捕され、何もできず20年間背負い続けていた負い目を払拭するため、親友を救おうとする刑事と、冤罪立証に未来をかける弁護士、そして娘を殺された父親の物語である。

 20年前に起きた事件は本当に冤罪だったのだろうか?別に真犯人がいて第二の事件を起こしたのか?それとも模倣犯なのか?読む進めるにつれ謎が深まり、ページを捲りたくなる作品だった。



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2008年4月20日 (日)

裁判員法廷(芦辺 拓)

 有罪、それとも無罪?被告人の運命は、あなたたち六人に委ねられた。いわくありげな裁判員たち、二転三転する評議、そして炸裂する究極のどんでん返し!裁判員制度のすべてがわかる、傑作リーガルサスペンス。



 img20080420.jpg  裁判員法廷

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 いよいよ来年から裁判員制度が実施される。一般市民が刑事裁判の審理に参加することになる。とはいえ、もしも自分が裁判員に選ばれた場合、どういう段取りになっているのか?いかに裁判に臨めばいいのか解らない。gawk

 本書は、題名どおり裁判員制度による法廷を舞台にしたミステリー。まるで読者自身が裁判員の一人として審理を体験しているかのように読むことができる。著者のシリーズキャラである森江春策が主人公となっており、ミステリー小説としての大胆な展開が織り込まれている。

 また、本書は三つの章に分かれており、それぞれに異なる事件をめぐって裁判が進行していく。

 たとえば『審理』で描かれているのは、ある悪徳コンサルタント業者が殺された事件の公判の過程。被告人が逮捕されたのは、現場に残された指紋や着衣に付着した被害者の血液分析によるものだった。だが、多くの証言を附き合せていくと、思いもよらない事実が浮かび上がってくる…。

 他に、専業主婦、教師、OL、無職の青年ら様々な裁判員が集まる『評議』、いきなり「私が殺しました」と被告人が述べる『自白』の二編。裁判員制度の仕組みに基づきつつも、ミステリーのひねりと意外性に満ちた作品が収録されている。新しい時代のリーガルサスペンスとして注目の一冊だった。



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2008年4月12日 (土)

ラットマン(道尾 秀介)

 結成14年のアマチュアロックバンドが練習中のスタジオで遭遇した不可解な事件。浮かび上がるメンバーの過去と現在、そして未来。亡くすということ。失うということ。胸に迫る鋭利なロマンティシズム。注目の俊英・道尾秀介の、鮮烈なるマスターピース。



 img20080412.jpg  ラットマン

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 『ラットマン』と呼ばれる素朴な線描画がある。動物たちの絵の中に置かれていると、それはラットに見える。人物画の中に置かれると、男の顔に見える。同じ絵なのに何故か全く別のものに見えてしまう。

 見る、聞くといった人間の知覚は、その前後に受けた刺激によって左右されるらしく、これを心理学などでは『文脈効果』というらしい。ミステリーのトリックやギミックの多くは、この文脈効果を応用したもの。振り込め詐欺の手口も、似たようなものだということだ。

 本書は、この文脈効果を最大限に利用してラットを人間に見せかけ、枯れススキを幽霊と信じ込ませる超絶技巧ミステリーの逸品。

 アマチュアロックバンドが、貸しスタジオで練習中に不可解な事件に遭遇する。かつてメンバーの一員だった“ひかり”が、密室状態の倉庫で重さ百キロのアンプの下敷きになって死んでいたのである。“姫川亮”は、幼児期に不幸な事件で姉を失い、今もそのトラウマを抱えて生きている。死んだ“ひかり”と付き合っていたが、最近はその妹・に惹かれるようになっていた。

 現場の状況から、容疑者は当時スタジオに居た4人のメンバーに限られる。4人は互いに疑心にかられ、同じ絵にそれぞれ別のイメージをふくらませ、新しい『ラットマン』現象を作り出していくのである。そして、推理の行方は二転三転し、容易に予断を許さない。



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2008年4月 6日 (日)

人形が死んだ夜(土屋 隆夫)

 卒寿の著者、最後の書下ろし!犯人は、私の掌のなかで、踊った…。

 ある雨の午後、温泉地に旅行に来ていた小学生・が写生の最中に轢き逃げされて死亡した。唯一の目撃者である男性に不審を抱く俊の叔母・紗江。自ら目撃者に近づき、男の嘘を暴こうとするが…。クライマックスは長野・望月地方に伝わる「榊祭り」の会場。荘厳な祭礼の流れに重なるように、物語は佳境へ導かれていく。



 img20080406.jpg  人形が死んだ夜

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 ひき逃げ事件を起こしても日本の法律では、業務上過失致死罪に問われるだけで、加害者に対して優しい処罰になっている。これでは被害者側の家族にしてみれば居た堪れないであろう。本書はそういった被害者側からの視点で描かれた作品である。

 内容的には復讐劇なのだが、探偵役というのが居らず主人公の紗江が復讐を誓った瞬間から犯人役へと転じていくという、少し変わったものになっている。話の流れはスピーディーな展開で進み、主人公やひき逃げ犯の心理描写がリアルに描かれていた。だが、残念なことに謎解きの要素が全く無く、不要なシーンも多々あった。どちらかといえば肩透かしを食らった感じのする作品だった。weep



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