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2008年4月12日 (土)

ラットマン(道尾 秀介)

 結成14年のアマチュアロックバンドが練習中のスタジオで遭遇した不可解な事件。浮かび上がるメンバーの過去と現在、そして未来。亡くすということ。失うということ。胸に迫る鋭利なロマンティシズム。注目の俊英・道尾秀介の、鮮烈なるマスターピース。



 img20080412.jpg  ラットマン

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 『ラットマン』と呼ばれる素朴な線描画がある。動物たちの絵の中に置かれていると、それはラットに見える。人物画の中に置かれると、男の顔に見える。同じ絵なのに何故か全く別のものに見えてしまう。

 見る、聞くといった人間の知覚は、その前後に受けた刺激によって左右されるらしく、これを心理学などでは『文脈効果』というらしい。ミステリーのトリックやギミックの多くは、この文脈効果を応用したもの。振り込め詐欺の手口も、似たようなものだということだ。

 本書は、この文脈効果を最大限に利用してラットを人間に見せかけ、枯れススキを幽霊と信じ込ませる超絶技巧ミステリーの逸品。

 アマチュアロックバンドが、貸しスタジオで練習中に不可解な事件に遭遇する。かつてメンバーの一員だった“ひかり”が、密室状態の倉庫で重さ百キロのアンプの下敷きになって死んでいたのである。“姫川亮”は、幼児期に不幸な事件で姉を失い、今もそのトラウマを抱えて生きている。死んだ“ひかり”と付き合っていたが、最近はその妹・に惹かれるようになっていた。

 現場の状況から、容疑者は当時スタジオに居た4人のメンバーに限られる。4人は互いに疑心にかられ、同じ絵にそれぞれ別のイメージをふくらませ、新しい『ラットマン』現象を作り出していくのである。そして、推理の行方は二転三転し、容易に予断を許さない。



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