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2008年10月

2008年10月26日 (日)

聖母(ホスト・マザー)/」仙川 環

 代理母は聖母なのか!?医学界最大のタブーにベストセラー『感染』の著者が敢然と挑む傑作サスペンス。

 女性作家でなければ描けない子供が出来ない悲劇。代理母は許されるのか。現代の最先端の医学知識を駆使して表現された感動作。



 img20081026.jpg 聖母(ホスト・マザー)

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 本書は、子どもを生めない、しかし子どもが欲しいと願う女性と、その家族が直面する様々な苦悩を描いた作品。『無言の旅人』に続く重いテーマである。

 海外で代理出産をすることの是非については問題がある。日本人が嫌なことを海外の女性に押し付けていいものか、或いは金銭授受を伴うことから人身売買であるという指摘。これらの問題を踏まえ、代理母は許されるのか?を問う。

 内容紹介では感動の傑作サスペンスとあるが、結末の意外な事実はある程度予測できたもので感動するほどでもなかった。sleepy



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2008年10月19日 (日)

告白/湊 かなえ

 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。

第29回小説推理新人賞受賞作「聖職者」を第一章とし、その後、第六章まで加筆して長編小説として刊行。



 img20081019.jpg  告白

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 三学期の終業式のホームルームからから始まるこの物語。担任の女性教師が、教え子である中学一年生に向かい、ある事情で婚約者と別れ未婚の母となった自分の過去や、教師と生徒の信頼関係など一見脈絡のない話を淡々と語り始める。

 やがて放課後に学校のプールで発見された幼い我が娘の死は、事故ではなくクラスの生徒二人による殺人だったという告発に至る。さらに二人の処罰を法の手に委ねる代わりに、犯した罪の重さをかみ締めながら生きざるを得ない“復讐”をすでに行使した、という爆弾発言へと続いていく。shock

 今にもほとばしりそうな恨みつらみの感情をぐっと抑えた、女性教師の冷静な語り口に圧倒される。まるで切れ味の鋭い短編のような見事な冒頭部。それもそのはず、この第一章はもともと第29回小説推理新人賞を受賞した短編小説だった。

 第二章以降は、家族や友人、そして犯人など、事件の関係者による視点から物語が語られていく。一教師の私的な“復讐”が水面に広がる波紋のように多くの関係者を巻き込み、同時に彼らの姿をも浮き彫りにしていく。

 自分の行動で犯人の少年を精神的に追い詰めていることに気づきもしない新担任の熱血教師、現実を直視し様としない学校クレーマーの母親、劣等感からリーダーに依存していく共犯の少年、そして己の幼稚さに気づかないまま他人を見下す歪んだ自我が肥大した主犯格の少年、といった具合に…。

 語り手が次々に変わっていく連鎖ミステリーの手法を用いた効果によって、殺人に至るまでの経緯や、告発後の影響など、事件の背景が多角的かつ重層的に描かれていく。一短編が予測不可能なほど意外な展開を見せる長編へと発展、変貌を遂げたのである。



 

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2008年10月13日 (月)

死墓島の殺人/大村 友貴美

 岩手県沖の小島、偲母島。この島の断崖で、島長の海洞貞次の他殺死体が発見された。捜査のために偲母島に渡った藤田警部補は、この島が地元の人々から「死墓島」という不吉な名前で呼ばれていることを知る。その名の由来は、島に残されたおびただしい数の墓石だった。なぜこんなにも多くの墓石が残されているのか?閉鎖的な島民たちを相手に捜査を開始した藤田は、次第に死墓島の裏の歴史を知ることになる。横溝正史の正統な後継者が描く、傑作長編推理。



 img20081013.jpg  死墓島の殺人

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 舞台は江戸時代からの流刑の地で、各所に刑場のある島「死墓島」。ここで、当時の残虐な死刑の方法を模して、連続殺人が起こる。断崖から死体を吊るしたり、生きたまま溺死させたりと、まさに雰囲気は横溝正史である。裏に隠されたのは凄惨な歴史と、真実を藤田警部補が解き明かす。

 本書、殺人の動機や手段もありふれたものではあるが、陰惨でいわくつきの島という舞台は横溝正史ばりのプロットで良かった。然しながら登場人物のキャラが立ってなかったのが残念だった。それと複雑なトリックやドンデン返しも欲しいところである。weep



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