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2008年12月14日 (日)

誘拐/五十嵐 貴久

 韓国大統領来日―。歴史的な条約締結を控え、全警察力が大統領警護に集まる中、事件は起きた。少女誘拐―。全く痕跡を残さない犯人に、大混乱に陥る警視庁。謎が臆測を呼び、臆測は疑念に変わる。ベストセラー『交渉人』の興奮再び!稀代のエンターテイナーが贈る超驚の警察小説。



 img20081214.jpg  誘拐

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 これまで多くの『誘拐』ミステリーの傑作が書かれてきた。本書では、総理大臣の家族を巻き込む前代未聞の事件が展開していく。

 韓国大統領の来日を間近に控えた東京は、これまでにない厳戒態勢がしかれていた。歴史的な条約締結を控えていたためだ。そんなときに首相の孫娘が誘拐された。ひそかに調査を進めていく警察。しかし、まったく痕跡を残さない犯人たちの綿密な犯罪計画の前に翻弄されるばかりだった。やがて事件は解決へと向かっていったのだが…。

 かつて岡嶋二人の「あした天気にしておくれ」では、競馬のサラブレッドが誘拐されるという奇抜なアイディアが使われていたが、こちらは現首相の孫である中学生の女の子をさらうという大胆な犯罪である。しかも本書では、犯人側の視点から犯行のほとんどが語られていくものの、政府や警察側は事件の着地点と目的がいつまでも判然としないまま混乱するばかり。多くの「誘拐」ものの醍醐味は、誘拐された者の身の安全と身代金の受け渡しに関する犯人と警察の攻防だが、ここでは二重三重に意表をつかれてしまう。ok

 結末には、単なる誘拐事件を扱った警察小説にとどまらない驚きが待ち受けている。間違いなく今年読んだ作品の中で屈指の傑作ミステリーに挙げられる一作だ。



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