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2009年7月

2009年7月26日 (日)

贖罪/湊 かなえ

 取り柄と言えるのはきれいな空気、夕方六時には「グリーンスリーブス」のメロディ。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺害事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせることになる―これで約束は、果たせたことになるのでしょうか?衝撃のベストセラー『告白』の著者が、悲劇の連鎖の中で「罪」と「贖罪」の意味を問う、迫真の連作ミステリ。本屋大賞受賞後第一作。



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 本書はもっか大活躍中の“湊 かなえ”の長編第3作に当たる。今回もまた悲惨な事件を通して人間の黒い心理をえぐり出す連作形式のノワール小説に仕上がっている。

 舞台は「日本一きれいな場所」といわれる田舎町。小学校のグラウンドで4人の友達と遊んでいた小学4年の美少女が作業員とおぼしき男に連れ去られて殺される事件が起きる。被害者の母親は、犯人を目撃しながらもあやふやな記憶しか残っていないという4人の少女を糾弾、それがトラウマのなった彼女たちは大人になってもそれを引きずることに・・・。

 かくて各章ではその後の少女たちの軌跡と現状が「告白」と同様の告白体で描かれていく。語り口や語り手が章ごとに変わる構成も「告白」の延長上にあるが、事件の被害者/加害者の対立劇ではなく、一種の逆恨み的な復讐状況を作り出すうまさ、そして各章ごとにヒロインを新たな事件に直面させる入れ子作りのうまさは、すでに手だれのものといっていい。

 冒頭の1篇「フランス人形」の紗英をはじめ、皆が皆、ながきにわたってトラウマにさいなまれているところへもってきて、さらに身近な人間に裏切られることになる。彼女たちを踏んだりけったりの過酷な状況に陥れていく著者の筆さばきはいかにもサディスティックというか、意地の悪い仕打ちのようにも思われようが、むろん著者はそこから罪を贖うことの本来の意味を問いかけているわけだ。

 一見殺伐とした著者の作風がもてはやされるのもそうした人間の闇、病理の摘出が心の浄化に結びつくからだろう。それこそまさにノワール小説の本領というべきかもしれない。“湊”小説の快進撃はまだ当分続きそうだ。



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