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2011年1月

2011年1月30日 (日)

卒業/東野 圭吾

 1件目。刑事前夜、最初の事件。

 卒業を控えた大学4年の秋、一人の女子大生が死んだ。親友、相原沙都子は仲間とともに残された日記帳から真相を探っていく。鍵のかかった下宿先での死は自殺か、他殺か。彼女が抱えていた誰にも打ち明けられない秘密とは何だったのか。そして、第二の事件が起こる。刑事になる前の加賀恭一郎、初登場作。

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 江戸川乱歩賞を受賞した『放課後』もその系列に連なる秀作だが、本作ではさらに大学生の個性的群像が実に新鮮な感覚で生き生きと描き出されている。剣道部、茶道部といった、これまでほとんど学園ミステリーでは取り上げなかった部活動を題材にして、それを巧みに推理小説的な舞台装置に生かしている。
 学生剣道選手権大会で二年連続優勝した加賀恭一郎、そして女子決勝で三島亮子になぜか敗れた金井波香など、この作品では、剣道の試合場面が効果的に所々にちりばめられ、それが一種のスポーツ・ミステリー的な味わいを醸し出してる。
 動機の重視ということは取りも直さず、人間を描くということにも通じるわけで東野圭吾のミステリーは、謎解きに徹しながらも登場人物がそれぞれ血と肉を持った人間として見事に描き出されている点に一つの特徴がある。
 この作品でいえば、探偵コンビを成す青年剣士の加賀恭一郎と相原沙都子の二人の肖像は実に爽やかでいい。このように、青春推理小説的な要素と本格推理としての謎解きの面白さを見事に融合して見せたところに、本作『卒業』の最大の魅力があるといっていいだろう。

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2011年1月15日 (土)

平家伝説殺人事件/内田 康夫

<内田康夫ベストセレクション>

 銀座のホステス萌子は、「三年足らずで一億五千万になる仕事」という言葉に誘われて偽装結婚した。だが、夫となった稲田教由は高知へと向かうフェリー「しーふらわー号」甲板から転落死を遂げ、萌子をそそのかした当山という男も二年後に事故死した。浅見光彦は、旧友の航海士・堀ノ内から依頼をうけ、稲田の郷里・高知県西土佐村藤ノ川へ。そこで光彦は平家一族の血を引く美少女・佐和と出会い、常ならぬ恋心を抱くのだが・・・・・・。巨額の保険金を巡る二つの事件の真相は?そして平家の落人伝説で名高い隠れ里に秘められた謎とは? シリーズ随一の名ヒロイン・稲田佐和が登場する不朽の名作。

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 『平家伝説殺人事件』は『後鳥羽伝説殺人事件』に続く「浅見光彦シリーズ」の第二弾である。光彦はこの作品の中であやうく結婚するところだった。ヒロインの稲田佐和と赤い糸で結ばれたように書かれているのである。実際、結婚するかであろう将来を予測させて、物語は終わっている。にもかかわらず、この後に出版された『赤い雲伝説殺人事件』では、光彦は臆面もなく別の女性と付き合い、佐和のことなどおくびにも出さなかった。実は、この時期の作品はあくまでも独立した形で書かれ、光彦も途中から登場する程度の人物として描かれていたのである。

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