薬丸 岳

2013年6月24日 (月)

友罪/薬丸 岳

 

もし、同僚が過去に重大な犯罪を起こしていたら-。凶悪少年犯罪の“その後”という難しいテーマに、真正面から挑んだ意欲作『友罪』。

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ジャーナリストを志して夢破れ、製作所に住み込みで働くことになった益田純一。同僚の鈴木秀人は無口で陰気、どことなく影があって職場で好かれていない。しかし、益田は鈴木と同期入社のよしみもあって、少しずつ打ち解け合っていく。事務員の藤沢美代子は、職場で起きたある事件についてかばってもらったことをきっかけに、鈴木に好意を抱いている。益田はある日、元恋人のアナウンサー・清美から「13年前におきた黒蛇神事件について、話を聞かせてほしい」と連絡を受ける。13年前の残虐な少年犯罪について調べを進めるうち、その事件の犯人である「青柳」が、実は同僚の鈴木なのではないか?と疑念を抱きはじめる…。

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2013年4月10日 (水)

逃走/薬丸 岳

 閉店後のラーメン店で、店主が何者かに暴行され死亡した。通報により駆けつけた救急隊員に、「約束を守れなくてすまない」と声を振り絞り、被害者は息絶える。通報した若者を容疑者として始まった捜査は、早期解決が確実視されていたはずだった……。足跡を追う刑事は逃亡犯の真意に辿り着けるのか。

 
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2012年10月11日 (木)

死命/薬丸 岳

 榊信一は大学時代に同郷の恋人を絞め殺しかけ、自分の中に眠る、すべての女に向けられた殺人願望に気づく。ある日、自分が病に冒され余命僅かと知り、欲望に忠実に生きることを決意する。それは連続殺人の始まりだった。榊の元恋人だけが榊の過去の秘密を知るなか、事件を追う刑事、蒼井凌にも病が襲いかかり、死へのカウントダウンが鳴り響く。そして事件は予想もしない方向へ―衝撃の展開、感涙の結末。

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 「死命」には二つの意味がある。一つは「死ぬべきいのち」。もう一つは「死と生命、生きるか死ぬかの急所」。「死命を制する」といえば、他人の生死の急所をおさえ、その運命を自分の手に握ることだ。本書は二つの「死命」を重ね合わせに描き生きることの意味を問う、サスペンスミステリーの力作である。
 
榊 信一、33歳。デイトレーダー。株の売買で巨万の富を築き、東京湾岸の豪華マンションに独りで住む。澄乃というおさななじみの恋人がいるが、性欲が高じると、すべての女を殺したくなるという衝動を内に秘めている。末期がんで余命数ヶ月と診断された日から、自分の欲望に忠実に生きようと決意し、次々と殺人に手を染めていく。
 
蒼井 凌、53歳。警視庁捜査一課刑事。2年前に妻を亡くし、ダンサーの娘、高校生の息子と3人で暮らす。組織捜査になじまない一匹狼だが、独特の勘の持ち主で、事件となれば寝食を忘れる。胃がんの再発で余命数ヶ月と知った日から、連続女性殺害事件の捜査に最後の執念を燃やす。
 
事件は、この2人に澄乃を加えた三つの視点から交互に描かれる。物語の進展につれて、榊の殺人衝動のもとになった少年時代の事件が浮かび上がる。
 
だから読者は、異常心理による快楽殺人を扱った犯罪小説、はみだし刑事の執念の捜査を描いた警察小説、禁断の恋のゆくえを追う恋愛小説。連続殺人の動機をめぐる推理小説の四つを同時進行で味わうことができる。
 
しかし、この作品の最大の読みどころは、病魔に死命を制された2人の男が、残された生命をかけて文字通りの死闘を展開する、その息づまるサスペンスにある。世にミステリー多しといえども、これほどの迫力と臨場感をもって「死ぬべきいのち」の急所を描いた作品は珍しい。

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2012年1月 8日 (日)

ハードラック/薬丸 岳

 人生をやり直したかったのだ。ネットカフェ難民相沢仁は、闇の提示板で募った仲間と軽井沢の金持ちの屋敷に押し入った。だが物色中、仁は何者かに頭を殴られて昏倒。ようやく独り逃げた彼は報道で、屋敷が全焼し、三人の他殺体が発見されたと知る。家人には危害を加えないはずが、おれは仲間にはめられた。三人殺しでは死刑は確実。正体も知らぬ仲間を、仁は自力で見つけねばならなくなった…。

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 本書、いわゆるネットカフェ難民だった若者が主人公の犯罪サスペンスである。
 相沢 仁は失業した後、日雇いの仕事をしながらネットカフェを転々とする毎日だった。いよいよ所持金も底をつこうとしたとき、ネットの闇掲示板で仲間を集め、軽井沢の屋敷を襲う計画を立てた。
 いったん社会からはじかれ転落すれば、這い上がるのが困難となる現実をはじめ、ネットを通じた匿名のつながり、どこか安易な犯行など、ここで描かれているのはきわめて現実的な犯罪の形なのかもしれない。
 主人公は、信じた相手から裏切られるなど不運に見舞われるばかりか、殺人犯に仕立てられてしまう。スリリングな導入部が身に迫り、彼の運命の行方を追わずにはおれない。意外性に富んだ話運びの巧みさで最後まで一気に読ませるミステリーだ。

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2009年8月20日 (木)

悪党/薬丸 岳

 自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、さらに、その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。



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 著者は、文芸誌「野性時代」で佐伯を主人公にした短編を7作発表していた。単行本化にあたり、全作品を大幅改稿し、一本の長編小説としてまとめ直したのが、この『悪党』という作品。

 犯罪者は何をもって罪を償ったといえるのか? 犯罪被害者遺族は何をもって罪を赦すべきなのか?犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤(かっとう)を克明に描いた、衝撃と感動の傑作社会派ミステリー。



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2008年6月22日 (日)

虚夢(薬丸 岳)

 愛娘を奪い去った通り魔事件の犯人は「心神喪失」で罪に問われなかった。運命を大きく狂わされた夫婦はついに離婚するが、事件から4年後、元妻が街で偶然すれ違ったのは、忘れもしない「あの男」だった。

 不起訴処分となった通り魔犯と街で遭遇したといい、過去からの苦しみに苛まれて、不可解な言動を強めていく元妻。彼女が見たのは、本当にあいつなのだろか。元夫にできることは、ひとつしかなかった。



 img20080622.jpg  虚夢

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 『天使のナイフ』で少年犯罪を、『闇の底』で性犯罪を扱った著者。3作目となる本作は、“心神喪失”の通り魔犯に娘を殺された夫婦の憎しみを通して犯罪者の精神鑑定に対して問題提起している。

 心神喪失の青年が12人を殺傷する事件が白昼起きた。青年は精神鑑定で統合失調症と診断され、不起訴処分となる。この事件で幼い娘を失ったフリーライターの三上、精神病院から退院した犯罪者の青年と心を通わせるキャバクラ嬢、この事件が原因で精神を病み三上と離婚した佐和子の現夫。この3人が視点人物となり、それぞれの立場から描かれる構成が巧みで、ぐいぐい引き込まれる。

 人を殺めたり、ものを盗むといった犯罪行為を行えば、法律に従って罰を受けるのは当然である。だが、このような罰を受ける場合には、その人物が責任を持てることが前提とされる。然し、『心神喪失者の行為は、これを罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減刑する』という刑法三十九条の存在で、人を殺傷した犯罪者が裁判にかけられることもなく、また刑務所に行くこともなく、措置入院だけで数年後には社会に戻ってこられるという現実。被害者や遺族が不起訴不当を申し立てたとしても、犯罪者が精神病であったならば検察側は起訴を見送るという。これでは、被害者や遺族は納得できるはずもない。まったく司法には絶望させられる。angry

 本作では、犯罪者が精神病を患っていたために不起訴という、理不尽な実情に屈しなければならなかった元夫婦の心情が痛いほど伝わってくる。つい最近、秋葉原で起こった無差別殺傷事件と重ねてしまうほど、深く考えさせられる作品で良かった。だが、ミステリーとしては残念ながら今ひとつ・・・、という感が否めなかった。weep



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2006年10月 3日 (火)

闇の底(薬丸 岳)

 『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞受賞。2作目となるこの作品sign01



 冷酷非道な幼い少女を犠牲者とした痛ましい性犯罪事件が発生する。怒りの思いをいっぱいにして、その犯人を追う埼玉県警の長瀬らは捜査を続けていたが、同じ所轄署内でかつて同様の罪を犯した前歴者が残虐にも首を切断され腹部にはサンソンの頭文字「S」を刻まれた殺人事件が発生する。shock



 サンソンとは、フランス革命時代に「死刑執行人」として代々続いた家系の名前である。



 当初は関係ないと思われていた二つの事件であったが、身勝手な欲望で幼女殺害事件が起きるたびに犯行を殺人で抑止しようとするサンソンの予告殺人により、性犯罪の前歴者が首なし死体となって発見される。shock

 幼女殺害と首なし殺人の関係は? 「死刑執行人、サンソン」を名乗る犯人の正体と真の狙いは何か…?



 img20061003.jpg 闇の底

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 本作、幼女殺害事件と首なし殺人事件の捜査場面、それにサンソンの視点からの場面と3つから構成されています。



 読んでいくにつれ中盤あたりでサンソンは誰なのか解ってきますが・・・・・・。終盤で違う人物に導こうとする著者の企みが有り惑わされそうになります。

 プロット的には良かったのですが、ドンデン返しがなかったのがちょっと残念でしたweepが、幼い命が犠牲となる犯罪が続発している今の世の中、同じ年頃の子どもを持つ親としてはただ事ではなくサンソンのような犯罪者を擁護するだろうか?考えさせられる作品でした。また、ラストの長瀬には共感しましたね~



 ミステリーではなくサスペンス的でしたが良い作品でした。



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2006年2月19日 (日)

天使のナイフ(薬丸 岳)

 第51回江戸川乱歩賞受賞作品。



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 少年法をテーマに被害者側の思いだけではなく、加害者側の思いも押さえながら「贖罪(しょくざい)」の意味を問う作品でした。

 難しそうに聞こえますが、そんなことはなく読みやすい。内容も二転三転し真犯人は誰だ~?と考えさせられる、よく出来た作品でした。

 ラストはと言うと・・・sign01 なるほど~。。。sun と、なる筈です。



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