大門 剛明

2010年12月 5日 (日)

確信犯/大門 剛明

 広島で起きた殺人事件。被告人は判決で無罪となった。だが14年後、末期がんに冒された元被告は告白した。犯人は自分であると…。その直後、事件を担当した裁判長・末永が殺された。嫌疑をかけられたのは被害者の息子・吉岡拓実。拓実は本当に事件を起こしてしまったのか。裁判に関わった二人の判事・正木響子と穂積直行、そして拓実の恋人・高遠乃愛は、二つの事件に隠された驚愕の真相に翻弄されてゆく―。司法格差の闇を鋭く抉った衝撃の問題作、戦慄のラスト。

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 本作、司法界の格差問題をテーマにミステリアスな事件を見事に描き上げている。
 裁判に関わった二人の判事や容疑者の恋人など、多視点で展開していく本作は、単なる犯人捜しで終わらず人間ドラマの妙でぐいぐいと読ませていく。それぞれの複雑な思いが交錯したまま、新たな事件が巻き起こっていくからだ。
 そのほか、法廷内だけではなく広島の野球スタジアムが舞台だったり、司法改革の問題に切り込んでいたりするなど、物語に広がりや深みが感じられる。もちろん最後に待ち受けているの驚愕の真実だ。巧みな仕掛けに驚くばかりである。

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2010年3月 6日 (土)

罪火/大門 剛明

 昨年、横溝正史ミステリ大賞を『雪冤』で受賞した著者が早くも第2作を発表した。『罪火』は、前作に勝るとも劣らない社会派ミステリーである。
 事件は、伊勢神宮奉納全国花火大会の夜に起こった。派遣社員の若宮忍は、中学2年生の町村花歩を殺した。しかし、警察が逮捕したのは別の人物だった。花歩の母親である町村理絵は、娘の事件を追い続け、ようやくその真相に辿り着いたのだが・・・。
 人は罪を本当に許すことができるだろうか。自ら犯した罪を心から悔い改めることはできるのか。

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 本作で扱われている社会的なテーマは、修復的司法というもの。犯罪の被害者と加害者が話し合うこと(VOM)により問題の解決を図るという試みである。そのVOMの仲介者だった町村理絵は、娘が殺されたことで自分も被害者の立場に立たされてしまい苦悩する。一方の若宮忍は、少年時代に殺人を犯した過去があった。
 事件当事者の和解、加害者の更生など、登場人物それぞれの過去と現実が描かれ、人間模様が絡み合いながら、驚くべき結末に辿り着く。複雑な心理や人間の裏側も巧みに物語に取り込まれている見事な作品だ。

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